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B6判/並製/カラー/128頁
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天文学者 海部宣男氏が、日本人が詩歌に託した宇宙への思いを読み解く。
世界天文年2009日本委員会委員長である海部宣男氏が、世界天文年2009を記念して、ハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡などが捉えた、美しい天体画像を見ながら、科学と文学の両方の視点から解説した贅沢な一書です。
まえがき
はるかな昔も、太陽や月や星は今と同じ光を降り注いでいた。人々は不思議な光を見上げて想像をめぐらせ、地上と天界を結んで物語りを紡いだ。天体の整然とした動きを見て季節を知るカレンダーとし、時間を計る時計ともした。だから宇宙は私たち人間がもの心ついて以来の親しい友だったし、私たちがこの世界を理解して生きてゆくための指針、つまり最初の科学ともなったのだ。
見まわしてみると私たちの周りには、宇宙と人との長い関わりから生まれてきた文化が、いたるところに生きている。日・月・火・・・という曜日は、五千年にわたる東西の文明の宇宙観と交流が生み出したもの。カレンダーや季節の行事、世界のさまざまな伝統や宗教、そして占いも、もちろんそうだ。遠い過去からひきつがれて、私たちの生活に彩りを添えている。私は天文学者として星や惑星の誕生を研究する傍ら、人間が遠い過去から宇宙に抱いてきた思いを知りたいと、古今東西の詩歌を中心に人の心の宇宙追ってきた。この本では、宇宙の様々な画像(それは想像を超えて美しい)を紹介しながら、詩歌俳句を織り交ぜて人と宇宙の交流を味わい、私たちの生活にのこる宇宙を振りかえってみたい。
多くの方に宇宙に親しみ、星を楽しんでいただくきっかけになれば、幸せである。
この本でも紹介するように、数百年前の沖縄の人々は、太陽や星をたたえる歌を、たくさん残した。次ページに挙げた「おもろ草子」の歌の、きらびやかさはどうだろう。星が織りなす壮麗な神の姿がそこにある。けれど今の日本に、この美しい星空はどれほど残っているだろうか。長く親しまれうたわれた星や天の川を、子どもたちはほとんど知らない。
宇宙との交流を、もっと取り上げてゆければと思うのである。
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